靴の素材と構造がキメ手! | 靴の取説
良い靴とは?
靴は素材と構造がキメ手です。
はじめは軽快でも1~2時間歩くと疲れを覚える靴もあれば、少し重く感じても一日履いて疲れの少ない靴もあります。じつは靴の重さや堅さの差とはそれほど重要なものではなく、靴の素材や構造の方が足の疲労に大きく影響するといわれます。疲れにくい靴を作ると、むしろ少し重くなることさえあります。
ここでは、靴の構造にあたる製法とその特徴、そして製造工程を説明します。

主な製靴法
完成された製靴法~グッドイヤー・ウエルト式製法~
この製法は、甲革や裏革等、甲の部品を縫い合わせて出来上がった「アッパー」と、「底」をジョイントする方法に最大の特徴があります。中底につけられた 「リブ」と「アッパー」をすくい縫いした後、「中物」と「シャンク(靴の背骨となる芯材)」を詰めてから、「表底」と「細革」を出し縫いします。
他の製法にはない「リブ」と「細革」が、この製法ならではの履き心地の良さの秘密です。また、中物をタップリと入れられるために、長時間歩いても疲れにくいという長所があります。
履きはじめは堅い印象ですが、履いているうちに足裏の形をなぞるように中物が変形し、フィット感が高まります。
さらに修理が可能であることも見逃せない特徴です。

足を包み込む履き心地~マッケイ式製法~
この製法の特徴を簡単にいうと、スマートな形、ソフトな足入れ、そして軽量です。それは甲革と中底と表底を一緒に通し縫いするという、比較的簡単なつくりのためです。
靴内部の底から甲にかけて、足を包むように仕上げるため、まるで靴下のような感覚でフィットする靴として多くの人に人気があります。靴の中をのぞくと、中底の回りに縫い糸が見えるので、マッケイ製法であることが確認できます。

軽くて履きやすい~ステッチダウン式製法~
甲革の端を外側に向けて表底に貼りつけ、その部分を出し縫いするという素朴な製法です。軽くて屈曲性が良く履きやすい上に、底回りの独特な風合いが好まれ、子供靴やデザートブーツ等、大人のウォーキングシューズやカジュアルシューズづくりに用いられています。

しなやかで柔軟~プラット式製法・カルフォルニア式製法~
甲革・中底・裾テープ等を縫い合わせて袋状にし、裾テープを底側に巻き込んでから表底を貼りつける製法です。プラットフォームに見立てた裾テープ部が特徴で、甲革と異なる素材で変化が出せます。中底に薄く柔らかい材料を使うため非常に屈曲性の良い靴に仕上がります。 ちなみに、この製法の名前は開発場所に由来しています。

耐久性が高い~ダイレクト・バルカナイズ式製法~
アッパーに中底をつけるまでは他の製法と同じ。まず、袋状になったアッパーに金足型を入れ、ソール部の左右と底を金型で囲みます。その後、この中底と金型で囲まれた空間に未加硫ゴム片を入れ、加熱加圧してゴムを溶かし、成形しながらアッパーに固着させます。大変堅牢な底付け法で、耐水性にも優れています。

軽くて安価~セメンテッド式製法~
アッパーと表底を接着剤で貼り合わせ、加圧密着させる製法です。構造が簡単で作業工程が短く、自動機械での量産が出来るため、一般に安価な靴作りに適しています。軽く屈曲性に富むのが特徴です。反面、底がスリ減ったときのソール交換は困難です。

ワンポイント解答
-
足にフィットする靴はどんな靴?
足のフィット感は、足にあった木型形状のうえで、中底が足の形に沿って変形することで生まれます。グッドイヤー・ウェルト式製法の靴は、この中底の構造が特徴的でフィット感に優れています。
-
いい靴は軽い?
「いい靴」というのは、用途によって変わってきます。長時間歩く場合は、軽さよりも疲労の度合いを考えた方が良いですし、人によってはファッション性と価格の兼ね合いで「いい靴」を見極めることもあるでしょう。ちなみに、足に合っている靴は、手に持ったときよりも履いたときの方が軽く感じるものです。
-
どんな靴でも修理出来るの?
製法によっては修理が不可能なものがあります。たとえばセメンテッド式製法の靴は、ソールの交換がとても困難です。
-
雨に強い靴は?
雨への対応は甲革や底の素材や製法でも変わってきますが、靴の構造的には、セメント式製法が比較的、雨に強いとされています。