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デザイナーに訊く「あのモデルのデザインワーク」 #1 KENSINGTON Ⅱ ―木型編―

2020.07.22

SHETLANDFOXの歴代モデルを掘り下げて紐解く連載。ファッション好きでもメンズシューズのことは実はよく知らない…そんなブランドSP担当者E子が、開発にまつわるここだけの話をシューズデザイナーから聞き出します!


E子 シェットランドフォックスといえば、フラッグシップモデルのケンジントン。完成された美しさと色気を感じます。

丸山 ケンジントンはシェットランドフォックスの顔とも言える代表的なモデルで僕もとても思い入れがあります。ブランドを再スタートさせた2009年当時から現在まで、お客様からの指名買いが一番多いモデルです。特徴はなんといっても木型でしょう。出すべきところはしっかりと出し、絞るべきところはしっかりと絞る。ねじれの効いた非常にメリハリのきいた木型です。今見ても我ながら惚れ惚れしますね。かっこいいなあ。

E子 このケンジントンの木型は他の木型と比べると独特のシェイプをしていますね。特に高くなった尾根の部分です。

丸山 上から見るとよく分かりますが、シェットランドフォックスの木型の多くはかかととつま先を結んだ線上から、中心が内側に向かってずれています。高くなった尾根のようなラインも内側の方へ流れているのが分かりますか?

E子 確かに内側に向かっていますね。

丸山 足の甲骨の一番高くなっている部分は中心より内側にあります。木型はその位置と重なるように削られ、足に自然な形で寄り添うように作られています。

E子 なるほど。この独特のシェイプは人の足に合った形なんですね。

丸山 その通りです。人の骨格や肉付きに忠実に木型を設計することで靴の中で足が外に流れないようホールドされるよう計算しているのです。
他にもシェットランドフォックスならではの特徴があります。木型のかかとにあたる部分の底に丸みがあるのが分かりますか?これも同様に、人のかかとの形に合わせて丸みを木型に持たせています。通常、グッドイヤーウエルト式製法の靴は、履き込むことでかかとが沈み、かかとに合った形に成形されますが、シェットランドフォックスの靴は買ったばかりでもすでにかかとに丸みがあるため収まりがとてもいいのです。

E子 中心をずらしていることといい、かかとの丸みといい、フィッティングがいいと言われている所以ですね。

丸山 ケンジントンの木型に関して言えば、他のモデルにはないのがつま先の厚み。デザインに趣きを加えるだけでなく、歩くときの足指の踏ん張りに必要な空間をこの厚みで持たせています。

E子 とことんはき心地に拘っているのが分かりました。木型ひとつとっても細部まできめ細やかに考え抜いて作られていますね。美しい靴は美しい木型あってこそ。丸山さんの美学を感じました!

 



ケンジントンⅡ  担当デザイナー
丸山 睦


実家が家電販売店ということもあり、学生時代は家電デザインを専攻。機能から考える「形」や、使いやすさから考える「形」に興味があります。靴も素材の進化が激しいのでデザインが楽しいですね。


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